困った人によって人間成長することもある
以前、よくお参りに来られてたおばあちゃんがいました。月に一回くらいお参りされるのですが、その度に一時間ほど延々とお話を聞かされてとにかく困りました。
いつも事前に連絡せずに突然来られるのも困るのですが、とにかくお話しが愚痴なので困りました。みんな人生いろいろありますが、そんなことについての愚痴を一方的に聞かされるのですから、たまったものではありません。
私は前に自分で会社を立ち上げるような人間ですから、聞き上手では全然ありませんで、こちらから話すタイプです。また、神主になって京都に帰ってきたばかりで、まだまだ人の話を聞く経験が薄かったのもありました。そのため、こちらから「それはこうなのではないのですか」などと話をするのですが、一切相手をしてくれません。一方的に自分の話をされます。そして、同じ話を何度も何度も繰り返しされるのです。毎月ほぼ同じような話を聞かれます。
勘弁してくださいとお断りする選択肢もありました。しかし、初代教会長である祖母の時代からのお参りされている人ですし、神さまへのお供えにお金も置いていかれるので、無下にするわけにもいきません。それから、この方は悪い人ではありませんし、何か天真爛漫なところがある方なのです。
とはいえ、一時間愚痴を聞かされるのはたまりません。毎回我慢して聞いていたのですが、これが何回も聞いているうちにだんだん苦痛ではなくなってきたのです。右から左へ話を聞き流すようになったからではありません。
自分の考え方を変えて、「この人はこういう事が言いたいのだ」「こういう愚痴を聞いてほしいのだ」と思いながら話を聞くようにしたのです。人の発言には思いがあって、思いがあるから話を聞いてもらいたいのだ、ということに気がついたのです。それからは、他の人の話や相談を聞くのが苦痛ではなくなり、むしろ相談者の思いというものに非常に関心を寄せるようになりました。
この方は一時間くらい話されて、満足して帰られます。お体を悪くされたので、もう来られないのかもしれませんが、新たな気づきを与えていただいたと今は感謝しています。
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＜このページの筆者＞
中島隆広 ： 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
★教会長中島の本が出ました！
日本人が伝えてきた心、そして生き方を、神道、神さまの話を中心としつつ、語った本です。相当な時間を掛けて作り上げました。ぜひ一度お読みください。
