手を打ちて跪拝に当つ
神前作法である拍手。これに関していわゆる『魏志倭人伝』に興味深い記述があります。
『魏志倭人伝』は中国の史書の中で、日本についての記載がある最も古いものです。邪馬台国などの報告がありますが、その他当時の日本人の風習が記載されています。その中の一つに。
「大人の敬う所に見(あ)うときは、但(た)だ手を搏ちて以って跪拝に当(あ)つ 」
敬意を表すべき偉い人に出会うと、拍手をして跪拝の代わりにする
『倭国伝』講談社学術文庫 藤堂明保他より
跪拝とはひざまずいて身をかがめることですが、当時の日本人はその代わりに手を打っていた、ということです。当時の中国での風習と異なるのでわざわざ記載したのでしょう。 最も、これが現在の神前作法の拍手につながっていると証明されているわけではありませんが、関係はあると私は推測しています。 仏教伝来以前の神道というのはあまりよくわかっていませんが、日本独自のものが多々あり、手を打つのはその一つなのです。
なお、ある本に拍手は「音は大きいよりきれいな事を重視する」と書いてありました。強く叩けば大きな音は出ますが、同じ音で連続したいものです。出雲大社/出雲大社教の場合は四拍手ですから、四回同じような音が続かないと非常に聞き苦しくなります。そこで音の出し方については各自で異なっています。
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<このページの筆者>
中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
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