現人神、現御神(あきつみかみ)という言葉について

現人神より現御神(あきつみかみ)

 現人神(あらひとかみ)という言葉は現在の日本では否定的なものになっています。
 神は目には見えませんが、姿を持って現れた神さまのことを現人神というか、あるいは天皇の尊称として使われています。ですが実はあまり使用されていません。
 もう一つ、ほぼ同義語で現御神(あきつみかみ)という言葉があります。これは主に飛鳥時代から平安時代の宣命(天皇のお言葉)に、天皇の尊称として出てきます

 「明神御宇日本倭根子天皇(あきつみかみとあめのしたしらすやまとねこのすめらのみこと)」 日本書紀孝徳天皇
 「現御神止大八嶋国所知天皇(あきつみかみとおおやしまのくにをしろしめすすめらのみこと)」 続日本紀文武天皇

 日本人は神ということば広く適用してきました(凡て迦微を参照)し、また神道では人間は神の子孫と考えています。天孫降臨された瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)始め、歴代の天皇の霊威を受けた現在の天皇が生き神と讃えられたのは不思議ではありません。
 他にも天照大御神の第二の御子神である天穂日命の血筋を受け継いでいる出雲国造(出雲大社宮司)も長らく生き神のように崇敬されたと言われていますし、親鸞の後継である本願寺門主も生き仏のように信仰されました。また。血統だけでなく、力のある霊能者に見てもらって救われた、という人は、その霊能者を生き神のごとく扱うという例も珍しくありません。

 ここで、ユダヤ教/キリスト教/イスラム教の話を見てみます。絶対主(ヤハウェ/ゴッド/アッラーと呼び方が違いますが同一です)と人間とは隔絶しています。そこで、イエス・キリストが問題になりました。偉い人ですが、ゴッドとしてしまうわけにはいきません。キリスト教では喧々諤々の上、ゴッドと聖霊とキリストは三位一体である、という説を採用しました。これはキリスト教徒の一部も賛成しませんでしたし、当然ユダヤ教徒とイスラム教徒も認めていません。
 キリストは三位一体でよいとして、次にでは聖母マリアはと言われるとまた困ってしまいます。  これを神道で考えてみると、イエス・キリストは偉い人なので神さまでしょう、ということで問題は起こりません。さらに聖母マリアも神さまのお母さんなので神さまじゃないですか、ということで簡単に終わってしまいます。

 そのように日本では神概念は寛容ですので、現在の天皇陛下を現御神とするのもたいして問題はないのですが、しかし明治以降、ここに絶対主の要素が入ってきました。
 西洋から議会、憲法、法律などたくさんのものを導入しますが、当然それらのバックボーンにはキリスト教があり、絶対主の存在があります。憲法を導入した伊藤博文は困り、絶対主に代わる存在として天皇をその位置につけました。それで憲法の導入が順調にいったという正の面もありますが、負の面もありました。  西洋人の中には、日本人は天皇という人間をゴッドとしている、という勘違いが生まれました。また、日本では天皇を熱心に崇敬する人が、ものすごく偉い方から、天皇陛下は絶対に偉いまで行きついて、困ったことも起こりました。
 二二六事件を起こした帝国陸軍の若手将校達は、あくまでも天皇陛下のため、と思いクーデターを行いました。しかし、昭和天皇は御意志は自分たちと違うと事後にようやく気がつきました。

 何にしろ、日本の神に一神教の絶対主の概念を持ち込んではいけない、このことを覚えておく必要があります。

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<このページの筆者>
 中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。

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