悩んだら他の人に話してみる
人は悩むものですが、悩むのは人だけではありません。神さまもまた悩まれることがあります。
古事記に出てくる神話に、海幸山幸の物語があります。ニニギ命の御子神である兄は海幸彦(うみさちひこ)として海で漁を、そして弟は山幸彦(やまさちひこ)として山で猟をしておられました。ある時、山幸彦は兄に頼み込んで道具を交換してもらい、海で釣りをしてみたところ、釣り針を失ってしまわれました。剣を潰して五百本の釣り針を作って返そうとしましたが、海幸彦は元の釣り針でないと困ると言って受け取られませんでした。
山幸彦はすっかり困ってしまって、海辺で泣き悲しんでおられた時、そこに塩椎神(しおつちのかみ)がやってきます。「なぜ無き悲しんでいるのですか?」と聞かれた山幸彦は今までの経緯を話されます。そこで塩椎神はアイディアを授けてくれます。船を造り海を進んでいき、山幸彦は海神(わたつみのかみ)の宮殿にたどり着かれ、話がさらに展開してくことになります。
人に話してみましょう
人生ではたびたび困ったことが起こります。どうしたらいいのか悩んでしまうこともあります。そんな時は一人で悩まず、ぜひ誰かに相談してほしいと思います。
出雲大社紫野教会でも人生相談を受けておりますので、私も多くの人とお話しをしました。塩椎神の場合は物語ですから良案を作って教えてくれますが、正直なところ私の場合はそんな力はありませんから、あくまでもお話を聞くだけです。でも、この話を聞いてもらうと言うことが重要なのです。
これからどうしたらいいのか、たいていいくつかの選択肢があるわけですが、どれも何らかの問題や不安があるので選べないわけです。ここにみんな深く悩むわけですが、これが話しているうちに自分の頭の中が徐々に整理されていくのです。考えた選択肢の中から、一番マシなもの選ぶことになるかもしれませんし、もしかすると新しい案が出てくるかもしれません。
とにかくやってみる
話したから必ず答えが出るとは限りません。それでも話をしてみるだけで随分楽になります。壁に話して一人で同じところをグルグル考えるようでは何も変わりません。お話聞いてもらった人にはいずれ御礼をしましょう。とにかく本当に一人で悩まず、誰かに相談してみましょう。
<このページの筆者>
中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
★教会長中島の本が出ました!
日本人が伝えてきた心、そして生き方を、神道、神さまの話を中心としつつ、語った本です。相当な時間を掛けて作り上げました。ぜひ一度お読みください。