一般の人が神社で祝詞を読むことはどうなのか

一般の人が神社で祝詞を読むことはどうなのか

 祝詞について

 祝詞は神前で斎主が奏上する詞です。祝詞と書いて「のりと」と読みますが、語源は宣るに呪術的な意味を持つ「と」が付いたものだ、というのが有力な説であるようです。
 祝詞は大和言葉で書かれた独特の文体の文章で構成されています。平安時代に編纂された「延喜式」には祝詞が収録されていますし、「日本三代実録」には朝廷が各神社に祈願した際の祝詞が掲載されていますから、今でもその当時に奏上された祝詞を見ることができます。
 延喜式の祝詞については
『延喜式祝詞教本』御巫清勇著、神社新報社
という本があり、これには原文、書き下し文、注釈、口語訳まで載っていますので、非常によくわかります。現在、神前で奏上されている祝詞についても、これら延喜式祝詞などの昔の祝詞を参考にして、それぞれの神社で作成されています。

 祝詞を奏上するのは

 さて、本題の一般の人が神社で祝詞を上げることについてです。祝詞の作成については、過去の祝詞などを参考にして、祝詞作成教本もありますので、それらを勉強すると、普通の人でもそれらしいものは出来上がるでしょう。
 出来上がったら、神社に行って読みに行きたい、それが人情かもしれません。

 そこで、神社に行って神職に「祝詞を上げていいですか?」と聞いてみると、ダメとは言われないけれど、あまり歓迎している感じでもない、という反応が多いのではないかと思います。
 「なんだよ、偉そうにしやがって、神社はお前たちだけのもんじゃないんだぞ」みたいに思う人も、もしかしたらいるかもしれません。
 確かに、祝詞は基本的に神職が上げるものである、という考え方はあると思います。神前の作法は足の運び、どちらの足から出すか、から細かいところまで決まっていますので訓練が必要です。服装(装束)もお祭りの大きさに応じたものを着用します。また、潔斎をして心身を清めます。神と人とつなぐにはそれくらいのことが必要とされるのです。あえていえばそうでなければ専門職として神職が存在している意味がありません。
 その神職の職分に素人が入ってくるのが不快なんだろ、というような理由もなくもないですが、実はそんなには大きくありません。

 実は迷惑なのは

 実際に他の神職たちに聞いてみると、違う理由が返ってきました。あまり一般の人が祝詞を上げることにあまり好意的でないのは「熱心すぎて迷惑な人がいる」ためです。
 例えば、賽銭箱の前、真ん中に立って、大声で長時間祝詞をあげる人がいます。そうすると、他の参拝者が引いてしまって近寄れなくなり、参拝せずに帰ってしまうことがあります。これは非常に困ります。
 また、祝詞あげてもいいですかと聞かれたので、いいですよとお答えしたら、賽銭箱のあたりで読むのかなと思ったら、ズカズカと進入禁止の殿内に入って祝詞座に座ろうとするので慌てて止めた、という話も聞きました。
 大半の人は気を遣って、ちょっと離れたところで微音で上げられますので、迷惑な人はまれなのですが、そのような人が百人に一人でもいると強い印象が残ってしまいます。結果、参拝者から祝詞を上げたいと聞かれると、少し警戒してしまうわけです。

 自宅で上げましょう

 出雲大社紫野教会は神道教会ですから、熱心な人も多く、祝詞を上げたいと言われても驚きませんので、どうぞお越し下さい。(それでもさすがに壇上の祝詞座は神職のみとさせていただいていますが)

 神さま事に熱心になると、神社参拝時に単に拝むだけでは満足できず、他に何かしたい、と思うのは不思議なことではありません。ただ、神社の都合、他の人の都合もありますから、あくまでも迷惑でない形で行っていただきたいと思います。

 自分だけのものということで考えると、自分の家の神棚でならよいのではないか、と思われた人もいることでしょう。その通りです。自分の住まいに神棚をしっかり設けて、そこで祝詞を上げれば、他の人に気兼ねすることもありません。
 神拝の祝詞集も最近は比較的簡単に手に入るようです(「出雲大社教祝詞集」というのもありますので関心のある方はお問い合わせ下さい)。お参りの方法は自己流でもいいですが、誰か先達に聞きたいところです。
 自宅の神棚でしっかり祝詞をあげる、これをぜひ続けてほしいと思います。


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<このページの筆者>
 中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。

★教会長中島の本が出ました!
 日本人が伝えてきた心、そして生き方を、神道、神さまの話を中心としつつ、語った本です。相当な時間を掛けて作り上げました。ぜひ一度お読みください。

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