神道を理解するためにキリスト教を学ぶ

神道を理解するためにキリスト教を学ぶ

 神道について学びたいんですけど、どうすればいいですか、と聞かれることがよくあります。まずは古事記と日本書紀を読んで下さい、そして、神道についての基本的な本を1、2冊読むのがいいでしょう、とお話しします。
 ではその次は、というと、意外と思われるかもしれませんが、キリスト教を勉強するのがよいと思っています。

 なぜキリスト教を学ぶことが神道の理解につながるのかと言うと、それはキリスト教の思想、教義、概念、制度などを比較することによって、神道がわかりやすくなるためです。例えば、「神」について私たち日本人は漠然とした概念はありますが、はっきりと神とはこうだ、とはなかなか言えません。そこで、キリスト教を考えてみると、キリスト教のゴッドはこの世の創造主にして絶対主であり、人間も含めてこの世をすべて支配している存在、唯一の存在です。これに対し、日本の神でいうと天之御中主神は最初にお生まれになった神ではありますが、ゴッドのような絶対主ではありません。さらに日本は八百万の神であり、唯一神という存在はありません。

 他にもキリスト教の教義や思想、歴史などをいろいろと見ていきますと、日本人にはここは不思議、あるいは納得できないと思えることが沢山出てきます。神道は日本人にとってはある種「光」のような当たり前の存在で、詳しく意識していないのですが、キリスト教というプリズムに当てることによって、わかりやすく把握できるようになるわけです。

 また、キリスト教を学ぶことは、それだけではなく別の産物もあります。明治以来、西洋諸国を模範としていろんなものを輸入しました。科学技術だけでなく、制度や思想も取り入れ、今ではすっかり当たり前になってしまったものも沢山あります。
 しかし、これらのものをよく見てみると、西洋諸国の制度、思想などはすべてキリスト教をベースにして出来ています。ですから、日本に輸入しても、100%理解して受け入れることはできず、どうしても変形してしまいます。
 例えば、「人権」という言葉を当たり前に使用していますが、そもそも絶対主ゴッドあっての人権です。これは絶対主のない日本の人権は、少し違ったものになっているはずです。そのことはあまり意識されていないようです。しかし、明治時代の初めには「天賦人権」と呼んでいたそうです。つまり明治時代の日本人はそのことを意識していたと言うことでしょう。
 その他にも「民主主義」「死刑制度」とか考えてみると、神道というより日本人の思想全体と西洋人との思想との違いがはっきりしてきます。

 外国の制度、思想を大量に輸入する、ということを日本人は過去にも行いました。それは中国からです。文字も中国から輸入しましたから、文字に連れて文章、さらに儒教や仏教の概念も入ってきました。そして、在来の日本人の思想も儒教や仏教の言葉を借りて表されるようになりました。これが神道の思想、日本人の思想がわかりにくくなった理由の一つです。その後仏教は日本に土着化して発展しましたから、さらに複雑になりました。
 ですから、神道と仏教を比較するよりは、まったく異質のキリスト教について知ることが、神道理解の手助けとなるのです。

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<このページの筆者>
 中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。

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 日本人が伝えてきた心、そして生き方を、神道、神さまの話を中心としつつ、語った本です。相当な時間を掛けて作り上げました。ぜひ一度お読みください。

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