わざわざ言わない小さな親切
京都市内はスーパーマーケットばかりたくさんできています。出雲大社紫野教会の周りにも増えて、歩いていけるところに4軒もあり、さらにちょっと車に乗ればもっとたくさんあります。スーパー戦国時代といった感じです。
近くに、チェーン店ではなく今時珍しい単独経営のスーパーが一軒あります。少し安く、店内も適当な広さで、また地元店ならではの品揃えや、単独ならではの掘り出し品があるので、よく利用しています。スーパー大競争の中で一店舗しかないのは明らかに不利に思えますので、少し応援したい気持ちがあります。そこで、例えば賞味期限が近いため値引になっているが、数がたくさんあってこれは全部売れないだろうと思うような商品があった時、特に必要でなくても一つ買っていったりします。
別にこの店の社員、店員に知り合いがいるというわけではありません。自分が自発的に行っているだけで、ましてや店員さんにわざわざ買いましたよとアピールするわけでもありません。そして応援といっても小さなもので、全部買い上げるとか、そこまでするわけではありません。
このような小さな応援はみなさんもしているのではないかと思います。物を買う時とかだけでなく、例えば他の人に対してもです。この人はいい人だ、頑張っている人だ、あるいは大変そうだ、という人に小さな親切をする。大きなことではなく、できる範囲で応援する。直接知らせるほどでもないのでわざわざ言いません。
ここで重要なのは、反対に自分も知らず知らずの間に、そのような小さな親切、応援を受けているのではないか、ということです。人間性にかなり問題ある人は応援されないとは思いますが、普通の人ならきっと受けていることでしょう。これをありがたいと思わなくてはなりません。
中には今大きな悩み事があって、そんな小さなものではなくて、今の自分の悩みを全部解決してくれるような大きな助けが欲しい、と思う人もいるかもしれません。気持ちわかりますが、しかし、そのような大きな恩を受けすぎるとあとが大変です。心理的には負い目になるからです。できる範囲の小さな親切だからお互いに負担にならずよいのです。
応援されるような人間であるように努めたいと思います。
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<このページの筆者>
中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
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