昔は神社の神木に触れると祟りがあるとされた
昔は神社の神木に触れると祟りがあるとされた
最近のパワースポットブームの影響で、神社の木からパワーをもらうとして、手を触れたり、抱きついたりする人もいるそうです。しかし、そもそも昔は神社の神木に触ってはいけないと言われていました。
「万葉集」にある歌を見ると
「神木(かむき)にも 手は触るといふを うつたへに 人妻といへば 触れぬものかも」
意味は”神木でも手ぐらいは触るというのに、むやみに人妻というと触れられないものだろうか”という歌で、人妻を好きになってしまった人のやや穏やかではない歌ですが、『日本古典文学全集』(小学館)の注では、「※普通は神木に接触したりいためたりするとたたりがあるとされた。」と書かれています。
同じ「万葉集」に、もう一首歌があります。
「うまさけを 三輪の祝(はふり)が 斎(いは)ふ杉 手触れし罪か 君に逢ひがたき」
”三輪の神官が神木として祀っている杉に、手を触れた罰でしょうか、あなたに逢えないのは”という意味の歌で、三輪の大神神社の神木に触ってしまったからだろうか、という恋の歌です。
この二首からわかるように、奈良時代の人は神木に触れると祟ると思っていたわけです。
もっとも、今、神社の木々に触ると祟るとは申しません。ただ間違いないのは、触れることによって木は傷むし、根元をたくさんの人が歩き回ると根が傷むということです。ひどい人になると木の皮を少しはいで帰る人までいるようです。本当にいけません。
そして言えるのは、触ったところでパワーをもらえるようなことは無いということです。そういう気がするだけでしょう。どなたが言い出したのかわかりませんが、普通に考えて頂いて、自然によろしくないことは避けられるべきだと思います。
神社側がわざわざ柵で囲って入れなくした、という場合は、上記の問題が起こっていると思われます。触るなと言われると反対に触りたくなるものですが、やめておきましょう。
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<このページの筆者>
中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
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